僕と田舎と夏休み

生きた教材・愛花1 短編

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僕の家は毎年、田舎にある実家に帰省している。 帰省と言っても一族が集まり、かなりの人数になる。

親たち大人同士で法事や交流を行い、かなり長く滞在することもある。

僕はこの集まりで、毎年、同じ年の愛花ちゃんと言う女の子と一緒に遊ぶのを楽しみにしていた。

愛花ちゃんはスカートなんて履きそうにないボーイッシュな子で、ゲームをしたり、野山を駆けまわったり、カブト虫を取ったりしていた。

僕も女の子の友達と言う感覚は無く、男の友達のように思っていた。

毎年、夕方になるまで遊んで、夕焼けを見ながら、2人で一緒に帰った。

一族の集まりでは、子供だけ、本家の大きなお屋敷の隣にある一軒家で過ごす。

一軒家なのだが、ここは「子供部屋」と呼ばれていた。

乳飲み子以外の幼児もそこに集められ、中〇生や高〇生と言った年長の子が面倒を見ることになっていた。

ただし、受験の子は殆どが帰省しなかったし、高〇生に上がったら親の意向で法事や大人同士の交流に行くこともあった。

もちろん一族の人数が多いと言ってもさすがに子供の年齢には偏りがあり、人数が少ないこともあったし、多い時もあった。

僕が子供部屋に預けられていた時は、人数が多い方だったが、同じ世代で固まっており、その時は丁度中三の子が多いときだったのと、高〇生に上がった子が多かった 僕が丁度〇5のころの話だ。

「今年は愛花ちゃんと2人だけかな」と思っていた。

小学生2人だけと言うのはさすがにまずいので、恐らく本家からお手伝いさんが面倒を見に来てくれるだろう。

僕は本家の大きなお屋敷に向かう両親に手を振って別れて、一年ぶりに愛花ちゃんに会えるとウキウキしながら離れの子供部屋に向かった。

子供部屋には愛花ちゃんが居た。

愛花との再会

「おう、「僕」久しぶり」

再会を喜ぶ「僕」

「愛花ちゃん、1年ぶり」 僕は1年ぶりの愛花ちゃんに会った。

愛花ちゃんは1年見ない間に体が大きくなっていた。

僕よりちょっとだけ大きくなっているように見える。

胸もふっくらとふくらみが目立つようになっており、もう少ししたら、この格好だと目のやり場に困るかもしれない。

しかし、中身の方は全く変わっていないようで、去年と同じように遊べるだろう。

真一

「よう、ガキども、元気そうだな」 そう声をかけてきた人は真一さんだ。

真一さんは去年中3で受験で来られなかった人だ。

同世代には4人いたはずだ。 僕は意外な顔を見てびっくりした。

真一さんを含む4人はあまり評判が良くなかった。

特に親は僕の父さんのことをあまり好きではないらしく、その影響もあってか僕にはあまりいい印象を持ってないようだ。

真一さんは親戚の中では「短気」と言われており、かなり喧嘩っ早い。

腕っぷしが自慢のタイプだ 「真一さん、こ、こんにちは」 僕は緊張しながら挨拶する。

文人

すると、「久しぶりだね」と声がかかる 精悍と言うより荒っぽい感じの真一さんより、ちょっと線の細いこの人は文人さんだ。

真一さんと同世代だったはずだ。

この人の両親は僕の父さんを目の敵にしている人たちだ。

本人も目端が利き、油断のならないタイプのように見える。

葉月

「やー、こんにちはー」 奥のへやからまた人が出てきた。 女の人が二人で、葉月さんと友子さんだ。

この二人も去年受験で来てなった。

葉月さんはぶっ飛んだ所のある残念女子と言われていて、とにかく下品だ。

家族がそろっている前で平気で下ネタを言い、ガハハと笑うようなデリカシーの無さは年頃の女子である葉月さんの評価を墜落寸前まで落としていた。

友子

友子さんは4人の中では一番大人しいタイプで、特に悪い噂は聞かないのだが、何故か葉月さんと仲が良く、それだけで評価を失墜させていた。

 4人
この4人とは一昨年まで一緒だった。

4人とも親戚づきあいがあまり好きなタイプではないし、親ともあまり仲が良いと聞いてなかったので、今年からは来ないと思っていた。

文人「どうしたんだい?びっくりした顔をして。」

僕「スミマセン。父からは今年から文人さんたちは来ないかもしれないと言われていました。」

文人「あー、確かに、大人はそう言いそう」

 愛花をかばう「僕」

4人を見ると、愛花ちゃんは顔をしかめて僕の後ろに隠れた。

文人さんは困った顔で「もう一人はご機嫌斜めになっちゃったみたいで」

仁王立ちの真一
真一さんが、僕をぎろりと睨んで、「なんだよ、小僧。ナイト気取りか?」

僕の頭を小突く 文人さんが慌ててとりなして、話を続ける

僕「愛花ちゃん?」

愛花ちゃんにそう言っても愛花ちゃんは顔をしかめて下を向いたままだ。

僕はとりあえず、「すみません。ちょっとまだ落ち着いてないみたいなので、僕ら、外に遊びに行っていいですか?」

文人「ああ、夕方までには戻ってきてね。」

そう言って僕はとりあえず愛花ちゃんから事情を聴くために、さっさと手荷物をおいて出ていった。

必要なものは事前に送られているはずなので荷物は手に持ってきた分だけだ。

外に出ると僕は愛花ちゃんに尋ねる

「どうしたのさ」

「あいつら、妙に気持ち悪い目で俺のこと見るんだよ」

「気のせいじゃないの?」

「・・・」

愛花ちゃんは黙ってしまった。

実際目つきが悪いというだけで真一さんたちを責めるのは難しいだろう。

僕は親戚筋の中でも結構発言力の高い父からかなり一族の多い僕の家の付き合いの難しさを聞いていた。

僕らは年齢的に迂闊な発言をしてもあまりとがめられることは無いかもしれないが、あまり変なことを言っては親同士の関係にも影響が出るかもしれない。

そのことは愛花ちゃんも親から聞いているのか、「もういいよ、そのことは、それよりも、新しいポケットマスター買ったか?

「うん、買った買った、後で対戦しよう」

愛花ちゃんは途端に笑顔になる。

そう言って僕と愛花ちゃんは去年と同じように夕方になるまで遊んで回った。

夕暮れの帰り道
真っ赤に染まった夕暮れの帰り道、愛花ちゃんは僕と手をつないできた。

去年まではこんなことは無く、僕も愛花ちゃんの手をしっかりと握り返す。

夕日に浮かぶ愛花ちゃんの顔はとても綺麗で、ドキっとする。

子供部屋に帰り着くころにはとっぷりと日が暮れていた。

帰ってから、本家から食事が届けられ、食事を済ませる。

お風呂に入ってから寝るだけになった。

部屋割りは男女別で僕と愛花ちゃんだけ一部屋ずつ与えられていた。

1階が男で2階が女だ。

かなり部屋数が多いように見えるかもしれないが、僕と愛花ちゃんの部屋は小さい部屋だった。

人数が多いときは雑魚寝になることもあったので、今年は恵まれている方だろう。

年長の4人は夜更かしするようで、遊びまわって疲れていた僕らは早々に眠くなっていた。

僕は途中で目を覚まし、トイレに行ったが、途中の真一さんと文人さんの部屋は電気が付いているが誰もいない様だった。

4人でどこかに行ってるのかもしれない。 ただ、コンビニなどは無いので、夜中に買い物と言うのは難しいはずだ。

この時、僕は明日からどんなに風に愛花ちゃんと遊ぼうか、それしか頭になかった。

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