剛志視点
美奈と美樹を農園の厚生センターの地下に連行する。
地下室には既に金原さんが待機していた。
「随分舐めた真似をしてくれたな。」
金原さんが美奈を睨む。
「見逃してください、お願いします。」
「今度はどこに逃げるつもりだ?旦那の借金が発覚するたびにこれじゃたまらんだろ?」
美奈は目を大きく開けて金原先輩を見た。
「美樹ちゃん。お母さんはまた君のお父さんの新しい借金の返済を迫られて、農園のお金を盗んで逃げようとしたんだ。」
美樹はその話を聞いて、ガックリと膝をつく。
「お母さん・・・本当なの?。」
「そうそう、美樹ちゃん、前の場所に居たとき、親切にしてくれたIさんっていたよね?どうなったと思う?」
美樹は答えない。
「自殺したよ。君と君のお母さんの借金の一部を肩代わりしたとたん、君のお母さんは逃げたんだ。」
美樹は驚いて美奈を見る。
美奈はさすがに青い顔をして俯いていた。
「さて、君のお母さんは色仕掛けで色々な人をだまして借金を押し付けたりお金を盗んだりしたわけだが、農園のお金も盗まれたんだよね。誰がやったのかな。」
「私は知りません。」
美奈がそう言うと
「嘘をつくんじゃねえ」
金原さんが怒鳴った。
金原さんが顎をしゃくって俺に合図すると俺はノートパソコンを持ってきて、動画を見せる。
動画には美奈が金を盗むところが一部始終記録されていた。
「剛志、荷物を調べろ。」
俺は言われたまま、美奈の荷物を調べると、事務所に置いたあった600万円が出てきた。
「美樹ちゃん、君のお母さんはウソツキで泥棒のどうしようもない人間なんだ。」
美樹は泣き崩れた。
物凄い修羅場だな。俺はそう思った。
「さて、話はここからだ。私たちは真面目で優しい農家だから、君のお母さんを助けて上げてもいい。借金を立て替えてあげてもいいと思ってるんだよ。ただし金額が金額だから君のお母さんが一人で返済するのは無理だ。」
そこで言葉を切る。
「君もお母さんと一緒に農園で働いて欲しいんだよねえ。」
金原先輩はとてもやさしい声でそう言った。
金原先輩怖いっす。
「駄目よ、美樹、返事をしてはダメ」
美奈はそう叫んだ。
「お前は黙ってろ。」
金原先輩が容赦なく腹パンをすると、美奈は腹を抑えて蹲った。
「ぐえええ」
カエルが潰されたような声を上げてのたうち回っている。
「お母さん」
美樹の悲痛な声が響く。
「この書類にサインしてくれたらお金を貸してあげるし、もう逃げなくて済むよ。お母さんを助けてあげられるし、ずっと一緒に居られる。」
金原先輩の優しい声が響く。
書類の内容は農園で業務(売春)をしながら借金を返済することが大人の言葉で書かれているものだが、簡単に逃げられないように金利がエグイ率になっている。
今の美樹は信じられないようなことが次々と起きて、正常な判断が出来るとは思えない。
しかし、金原先輩は美樹に決断を迫る。
美奈はまだ床に苦し気にのたうち回っている。
「おい、剛志、その舐めた女をもう一回ぶん殴れ」
その言葉を聞いて、美樹は書類にサインした。
「よし、剛志」
金原先輩が顎をしゃくったので、美樹がサインした書類を部屋の外に持っていき金庫にしまった。
美奈と美樹は暫く地下室に軟禁することになった。
美奈は1階に連れていかれた。
あたりには事情を知った組合員が不安げな顔で集まっていた。
「農園の金をもって逃げたのは神楽坂美奈だった。
剛志と浩二、達夫が3人で捕まえた。
警察に突き出すことも考えたが、農園で建て替えた借金もある。
しばらく監視をつけて引き続き農園で働いてもらうことにしたが、異論があるものはいるか?」
金原さんがドスの効いた声でそう言うと不満そうな顔をしている組合員はいたが声を上げるものはいなかった。
「わ、私はお金なんて盗ってません。何かの間違いです。皆さん信じてください。」
監視カメラの映像はみんな見ているので美奈の言い訳は意味がないのだが、この往生際の悪さはいっそすがすがしいほどだ。
美奈は20代後半といっても通じるくらいの見た目なので、おそらく、その見た目も利用してうまく言い逃れしてきたのだろう。
あたりがざわざわとざわめいた。
「落とし前は付けてもらうぞ」
金原先輩は美奈に容赦なく腹に膝を入れる。
もちろん金原先輩が本気でやればタダでは済まないのでかなり加減しているのが分かった。
「顔が傷つくと仕事が出来なくなるからな。
跡が残らないようにしてやる。」
そう言って膝を入れると床に涎を垂れ流しながらのたうち回った。
そして、苦しみが治まってくるとまた膝を入れる。
その凄惨な姿を見て、組合員たちは一人、また一人と立ち去って行った。
最後に浩二先輩と達夫先輩と俺たちだけが残った。
浩二先輩と達夫先輩は泣きそうな顔で下を向いていた。
「剛志、お前もやってみろ。やり過ぎるとあばらが折れたり死んだりするからほどほどにしておけよ。」
これ以上ないくらい爽やかな笑顔で美奈に膝を入れる。
3回ほど繰り返すと美奈は止めてくれと哀願するようになった。
俺はもちろん金原先輩に逆らえるはずがないので容赦なく美奈に膝を入れた。
「ぐええええ」
顔に似合わない呻き声を上げながら美奈は床にのたうち回った。
地獄のような光景だが、俺は言われたとおりに美奈の腹に膝を入れる。
美奈の顔は既に涙と鼻水と涎でぐしゃぐしゃだった。
「そろそろいいだろ。地下に連れていけ。」
俺はボロボロになった美奈を地下に連れていき、美樹がいる部屋に押し込める。
「お母さん。」
美樹はボロボロになって力なく床に横たわる母親に抱き着いた。
憎しみの籠った目で、俺を睨む。
「人でなし、アンタたち人間じゃないわ。」
「死んだIさんもお前ら親子にそう思ってただろうな。」
俺はそう言って部屋にカギをかけた。