牝啼き村 -そして、少女は娼婦になった- 剛志の章1(本記事)
※ 画像をクリックすると拡大します。
「ウィーッス」
「お、剛志くん、早いな。」
「矢本っさん、また育成速度伸ばしたってホントですか?」
「おう、任せな。長年のカンって奴だ。」
「俺、高校の時は矢本っさんの事、単なる飲んだくれのオッサンだと思ってました。でも、農業では凄いっすね。みんな言ってましたよ。」
「ガハハハハ。なんのなんの。」
「今日の作業はビニールハウスの39号から78号までですか?」
「おう、そう言うことになってるな。」
「じゃ、俺、53号から行きます。」
「おう、またな」
俺は農園で使われている4輪バギーのアクセルをふかす。
あんまり速度は出ないがトルクはある。
重い荷物もらくらくだ。
俺の名前は細川剛志。
とある田舎の村に住んでいるどこにでもいそうな冴えない勤労青年だ。
学生時代は出来が良くなかったので高校を卒業してすぐ働いている。
運がいいことにうちの村ではとある特産物が当たって、農業の組合を作り、みんなで共同で農園を運営して利益を分配している。
そんなうまい話があるのかって?
まあ、俺もそうだけど、みんな薄々それが何なのか気が付いているけど、誰も何も言わない。
俺は農園の中では一番若いペーペーだから何でも言われたことはその通りにやってる。
元々ウチの村は冴えない農村だった。
手間やかかる金の割に合わないから、みんなどんどん止めていき、台風や大雨で大きな被害が出ると、また止めていく。
昔はそれなりに居た村の住人も一人、また一人と農家をやめていき、村から出ていったそうだ。
俺が物心つくころには立派な過疎の寒村になっていた。
そんな状況が一変したのは10年くらい前だったと思う。
何か、村の外からやってきたとあるアロマハーブを取り扱っている業者が
偶然、村人からある葉っぱ見せられて、高く買うと言い出したそうだ。
村に昔から生えている何てこと無い葉っぱが高く売れるとわかって、みんなで思い切ってその葉っぱの生産に切り替えた。
その葉っぱは村に莫大な利益をもたらした。
最初はみんな嬉しさのあまり浮かれまくったそうだ。
そりゃそうだろう。
人が少しずつ減っていき、未来の無い土地にいきなり金の卵を産む鶏が発見されたんだから。
しかし、その状況が落ち着くと冷静に考える人も出てくる。
一体何に使うのか、疑問に思ったそうだ。
幾ら健康ブーム、リラクゼーションブームとは言ってもただのアロマハーブがそんなに高く売れるわけがない。
丁度その時大阪で「関西連盟」と言う半グレ組織に居た村の出身者に調べてもらったそうだ。
その半グレ組織に居たのは俺の先輩で数々の武勇伝を残している人だった。
名前は金原俊。俺の6コ上で年齢が離れていることもあって子供の時はどんな無茶ぶりでも絶対服従だった。口答えしたら鉄拳だ。
その超怖い金原先輩が半グレ組織の色々なツテを使って調べてもらった結果、その葉っぱは立派な麻薬と解った。
所謂、合法ドラッグって奴だ。
それを知った村人は割れた。
今は違法ではないが、何れ違法になるかもしれない。
しかし、一度味わってしまった贅沢を止めることはできない。
その葉っぱを売った収益は莫大で村の農家は見事に全員がその葉っぱの生産に切り替えて、普通の農作物は自分の家で使う分しか作らなくなっていた。
そこで、裏社会のスペシャリストである金原先輩に戻ってきて貰って、本格的に村でこの葉っぱを生産するとにしたわけだ。
たったこれだけの結論を出すのに、モメにモメたそうだ。
まず、個々の農家で生産していた葉っぱを1か所に大きな農園を作って集中して生産する方式に切り替えた。そして、村の農家総出で、男も女も子供ですらも狩りだして、野生に生えているこの葉っぱを山狩りして、全て摘み取った。
この山狩りは今でも時々行われている。
他所で生産されるのを防ぐためだ。
そして、組合を作って、全員で均等に利益を分けることにした。
これは、結束を高めて外部に情報を漏らさないためだ。
みんな、元はしがない農家でしかなかったので一人でこういったことを続けるのは完全に腰が引けいたという事情もある。
そのころには金原さんが流通経路を仕切ることによって、利益率がさらに爆上がりしていた。
どんだけボってたんだ業者。
何か、税金が安い外国にダミーの会社をいくつか作って書類上そこを経由させたり、海外に工場を作ってパッケージはそこで作ることによって、村から出荷していることを隠しているらしい。
最終的な製品は日本国内ではなく、海外に販売しているそうだ。
俺はバカだから難しいことはよくわからないが、金原先輩が村のこのハーブの事業を取り仕切るようになってから、かなり本格的になったと思う。
先輩も半グレ組織の中での自分の立場に限界を感じていたらしく、村に戻ってきてくれることになった。
この話がまとまったときの俺の親父の安心しきった表情は今でも覚えている。
こうして金原先輩は村のこの怪しい葉っぱ事業の実質的な責任者になった。
金原先輩は年齢の問題もあるので副代表になり、代表には俺らの親父世代から上の人たちから選ばれることになった。
この時の話は有名で誰も代表になりたがらずに延々と会議の時間だけが過ぎていったそうだ。
代表と副代表の報酬を3倍にしても誰もやりたがらず、結局持ち回りでやることになった。
まあ、問題が起きたら、名前が出たり逮捕されることになるから当然っちゃ当然かもしれない。
俺も頼まれたら断るだろう。
だけど、ヘタレだから、金原先輩にすごまれたら小便ちびって泣きながら言うこと聞くだろうけどな。
農園にはこの怪しい葉っぱを1年中生産するためにビニールハウスが並べられ、頑丈なフェンスで囲って犬も何匹か飼っている。
もちろんチワワのような可愛らしい奴じゃなくて、獰猛な奴だ。
農園の周りにはカメラを付けて、組合員以外は近づけないようになった。
こんな警戒が必要なのかって?
実際何回か、最初に取引した例のボッタクリ業者の仲間らしき連中が来たことがある。
金原先輩はこういうことになれているだけあって本当にやることが的確だった。
村でも農園には近づくなと言うことになっているし、葉っぱが高く売れることは大人ならみんな知っていたので、疑問に思うことがあってもみんな見て見ぬふりをしている。
人間ってのは一度豊かな生活を味わうと、下に落とすことは難しい。贅沢を維持するためなら何でもやる。
俺も多分何でもやるだろう。
俺みたいなバカは本来なら薄給で頭のいい奴に一生顎で使われるのが関の山だっただろう。
でも今は同年代の大半の奴らより、例えば、高校時代に俺をバカにしていた奴ら・・・・東京の有名大学に進学して、一流企業に就職した・・・よりもずっといい金を貰っている。
今の自分の立場は分不相応だと解っている。
だから俺はこの生活を守るためなら何でもやる。
村のためになら何でもやるつもりだった。
組合が出来て数年たってから、福利厚生のぜいたくな施設が欲しいとみんなが言い出した。
親父たち世代の農業経験による栽培方法の確立によって生産力が極限まで高まり、金原先輩によって利益率が極限まで高まった農園は相当な金を産んだが、将来の拡張に備えてかなり設備のために積み立てをしていた。
暫くは様子見のために分配金の金額を変更しなかったことも原因だった。
みんな、どこかでこの金の卵を産む鶏が失われるのではないかと恐れていたのだ。
積立金の額はこの恐怖感の表れだった。
これだけの積み立てをした上で、それでも十分以上の報酬が組合員には分配されている。
今でも組合の駐車場には高級車や外国の車がズラリと並んでいるほどだ。
さすがにこんなに使わないということで、全員で分配するより、働く人たちのために休憩所のような福利厚生施設でも作ったらどうかと言う話になった。
実際、組合員の中には最初から全員が参加していたわけではなく、途中から参加した人たちもいた。
分配するとなると面倒になるという話が出ていたのは事実だった。
全員の要望を聞いた結果、地下1階、地上3階、鉄筋コンクリート造り・・・豪華な厚生センターが完成した。
金原先輩もこれには苦笑いしたそうだ。
が、普段から肉体労働している人たちだ。
トレーニング施設とか卓球場とか作ったが、いつもみんなで使っている休憩室を除いて、ほぼ使われなくなった。
たまにみんなで掃除しながら、「どうしてこんなもの作ってしまったんだろう」とため息をついていたそうだ。
地下なんて全然使われてない。
もちろん、普通の休憩室は今も使っている。
飴とかお菓子とか業者に配達してもらって食べ放題だし、さすがに酒は無いがドリンクも飲み放題だ。
週刊誌や新聞も何種類か取って読み放題、ネットも超高速回線が無料だ。
当然だが、テレビもデカいのが完備してある。
休みの日もわざわざ新聞・週刊誌を読んでコーヒーなどのドリンクを飲みに来る人もいるくらいだ。
俺らの親父世代のオッサンたちは「おっ母がうるさい自宅にいるより気が休まる」と宣っていた。
年よりの休憩所よろしく、オッサン同士で集まって仲よく世間話だ。
これで酒があったら立派な飲んだくれの集会場だろう。
矢本っさんは理事会で強硬に酒を置くことを主張していたが、全員一致で却下になっている。
そのうち、栽培の方が気になって、休養日に仕事をする人も出てきて、「これじゃ福利厚生になってない」とみんなで苦笑いしていたくらいだ。
しかし、施設の大半は持て余していた。
俺が高校を卒業して農園に参加した時は一階だけは使っていたが、もう大半の部屋は使われていない状態だった。
俺が入って半年くらい経ってからだろうか。
金原先輩に飲みに誘われた。
怖くて断りたかったが、もちろんそんなこと言えるはずがない。
金原先輩は190cm以上背があって、服の上からも筋肉が盛り上がっているのがわかる
顔は温和だが、上着を脱いだ時に無数の傷がついていたのを俺は見ていた。
その時「この人には絶対に逆らわないようにしよう」と心に決めていた。
刃物で付けられた傷だけではなく、明らかに銃で撃たれたような傷があるのもこの人の怖いところだ。
「おい、剛志、お前、いい金もらってんだから、オンナの一人でも囲ってんだろ?一人回せや。」
「いやあ、俺全然そんなのないっすよ。」
金原先輩はギロリとこちらを睨んだ。
「なんだ、お前、その年で女の一人もいないのかよ。カーっ情けない。俺がお前の年の頃は・・・」
先輩は言葉を途中で止めて考え込んだ。
この人が考え事した後はろくな事言い出さないんだよな。
せめて、次の言葉に俺の命の危険が無い内容であることを祈りながら待った。
「ああ、そうか、俺らがコキ使ってるもんな。考えてみりゃお前が一番忙しいんだから、オンナとヤル暇なんて無いか。俺もこっち来てからとんとご無沙汰だわ。」
これは事実で金原先輩はびっくりするくらい働いた。
本人はこう言ってるが多分この人が今まで一番働いているだろう。
なんせ海外出張もしてるんだから。
金原先輩の働く姿をみて、半グレも楽じゃないなと思ったくらいだ。
「はあ・・・」
俺は曖昧に相槌を打って、内容が大したことが無くて安どした。
「そう・・・だな。じゃ、あの厚生センターは使ってねえし、オンナ買ってきてやらせてやるわ。」
「この日本で人を買うなんてそんなこと出来るんですか。」
遂にまたおかしなことを言い出したか。
俺はどんな無茶ぶりをされるのか戦々恐々として次の言葉を待つ。
「まあ、建前はジンケンとやらがあって、平等ってことになってるよな。でも、この社会には人権が無い奴がいるんだ。どんな奴だかわかるか?」
「えーっそんな人いるんですか?全然解りません。」
「それはな、[金の無い奴]だ。俺もこのシケた村が嫌で大阪に出た。
金が稼げる可能性なんて皆無だろ?
でも、都会は都会で出来る奴がしのぎを削ってる。
だから、この村でアレを栽培していると聞いたとき、俺はチャンスだと思った。
何故かわかるか?金が手に入るからだよ。
今の結果にはそれなりに満足しているし、頭は悪いなりにちゃんと上の言うことを聞くお前には出来ることはしてやりたいと思っているよ。」
ちなみに俺は村でもバカで通っているので人からバカだと言われることに抵抗はない。
俺は自分がまだ子供だった頃、金の無かった時の両親や村人の姿を思い出す。
「そう…かもしれませんね。」
「思い当たる節があるだろ?まあ、俺に任せておけ。悪いようにはしない。」
この人の「悪いようにはしない」はたまにとんでもない結果になることがあるんだよなあ。
それから何事も起きなかったので、忙しくて俺との約束なんて忘れてるんだろうと思っていた。
しかし、思いのほか律儀な金原先輩はちゃんと約束は守ってくれた。
そう、ちゃんと。
それからしばらく経った頃、金原先輩から携帯に電話が入る。
俺は丁度、有り余っている貯金を使って買ったゲーム機で遊んでいた。
俺は先輩からの電話は3コール以内に取ることにしている。
遅れたら半殺しを覚悟だ。
「おう、剛志、お前今日休みだろ?ちょっと農園の厚生センターまで来い。」
「わ、解りました。」
俺は農園迄すっ飛んでいった。
厚生センターに入ると先輩と親父が待っていた。
親父が片手を上げる。俺も片手を上げて答えた。
そして親父は金原先輩に頭を下げて農園の作業に戻っていった。
俺は先輩のあとについて山ほどある使われていない部屋に連れていかれる。
中に入ると、そこには俺よりも10才くらい年上の女の人が一人いた。
俺はわけがわからず、先輩の顔を見る
「おう、コイツ、俺がツテを使って[買ってきた]女だ。コイツで童貞捨てろや。女とは早めにヤッとけ。風俗経験あるから上手いし、お前が下手でもフォローしてくれる。じゃ俺は行くからゆっくり楽しめ。」