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ある委託検針員の話
私は委託検針員の仕事をしている。 水道、ガス、電気などいくら使ったか毎月調べて報告する仕事だ あまり知られていないが、この仕事は給与制ではなく、委託が多い。
要するに個人事業主と同じだ。 もちろん受け持ちの数をこなした分だけ収入になるので安定はしているのだが、収入が極端に増えるということもない。
私は困っていた 最初はほんのちょっとしたことだった。
この仕事は他人に尊敬されるような仕事ではない。
それどころか、人からそこにいると認識されないような仕事だ。
言ってみれば周りの人から見れば我々は空気と同じだった。
そのことに妙なイラつきを覚えていたこともある。
私はそれまで堅実な生活を心がけていたが、同じ委託検針員の悪友の言葉に乗せられて競馬にのめり込み、結構な借金をしてしまったのだ。
安定しているということは極端に収入が増えないということ。
返済を始めてから生活が苦しくなり、今では蓄えも底をつき食うや食わずと言う状態だ。
どうにかして金策をしなければいけなかった。
しかし、もちろん収入を簡単に増やす事なんてできない。
出来ればみんなやってるだろう。
何かないかとネットを漁っていたら、情報屋がいるというような書き込みを見かけた。
自分の持っているような情報でも売れるのだろうか?
とりあえず私を競馬に誘った悪友に聞いてみた。
意外なことにその悪友は情報屋の存在を知っていた。
私は藁にもすがる思いで、情報屋に連絡を取ってみた。
きわめて胡散臭いし、普段なら相手にしないが、私はその時困っていたので、一も二もなく、情報屋に会いに行った。
情報屋は私の仕事の担当地区を確認すると、調べてほしいことがあると言ってきた。
提示された金額を聞いて私は一も二もなく応じた。
その情報は私の受け持ち地域のある家の情報を集めてくることだった。
私は本来なら必要なかったのだが、メーターに異常がみられると嘘を吐いて、その家庭の奥さんがいるときに上がらせてもらった。
世間話をするフリをして、様々なことを聞き出した。
その情報を渡すと、最初の倍の金額をくれた。
私は胸をなでおろしたが、全額返済するには少し足りなかった。
しかし、これ以上、私の持っている情報を売るのは無理だろう。
情報屋はその時意外な提案をしてきた。
私の使っている作業着を買い取りたいと申し出たのだ。
私は金額を聞いて一も二もなく飛びついた。
作業着はまた買えばいい。
こうして私は競馬の借金を全て返済した。
もちろんそれ以来二度とギャンブルには手を出していない。
私の売った情報なんて何の使いでもない情報だろう。
なんせ、特に金持ちの家でもない普通の家庭だ。
私は何に使うのか少し不思議に思ったが、借金を返済した喜びで頭がいっぱいで、すぐに忘れてしまった。
粟野 雄三の章
その女を見かけたのは偶然だった。 実にいい女だった。
俺は昔から、人のものが何でも欲しくなる性分で、女もどんなに美女でも食指が動かなかったが、彼氏や旦那がいるとわかると猛然と落としにかかった。
俺が見かけた女は今までの中でも好みどストライクだった。
すかさず後をつける。
スーパーの買い物袋を持っているので、人妻だろう。
年のころは20代後半か、若く見えるが30台かもしれない。
その女はある団地に入っていった。 公営住宅だろう。
こうした団地は住民の移動が少ないため、外部の人間が入ってくると異常に目立つ。
近所の奥さん方の差すような視線にさらされながら、女がどの部屋に行くか確認した後、すぐに団地を離れた。
俺は親から受け継いだ不動産や資産で食っていて、黙っていても金が入ってくる。
人づてのつながりで時々雑誌に記事などを書いていくばくかの金をもらっているが、向こうは付き合いだと思っているはずだ。
大した文章は書けない。
少なくとも自分ではそう思っている。
幸いなことに金だけはあるので、暮らしには困っていない。
俺はあの女のことが気になっていたが、あまりうろつくと警察に通報される危険性があった。
そのため、情報屋から情報を買うことにした。
水道やガスのメーターを検針している男が丁度金に困って情報を売ってくれるということだった。
俺はそれなりの金額を払って女の素性を調べた。
女は上条 彩織、33才。20台後半かと思ったが、何と33才だった。
旦那は1か月後に東南アジアの某国に単身赴任することになっているそうだ。
中〇生になる娘が一人いるらしい。
あのむしゃぶりつきたくなるような体で娘を産んでいるとは思わなかった。
俺は旦那が海外に単身赴任で長期留守にすることを確認して、ほくそ笑む。
まるで、俺のために出張してくれるようなタイミングだ。
俺は1か月後旦那が居なくなっから彩織をものにすることに決めた。
念のため、3か月後に決行することとした。
決行前に念のため情報屋から何か大きな変化が無いかどうかを確認したが、特に変化はない。
決行の当日、俺は予め情報屋に用意させた作業着を着て、検針員のフリをして、彩織の家に向かった。
呼び鈴を押すと、彩織が出てくる。
検針員だというと、何の疑問も持たずに、ドアを開けた。
彩織「あら、いつもの方も違うのですね。」
俺「ああ、担当の変更があったんですよ。」 そう答えて中に入る。
彩織「最近は随分と不具合が多いようですが・・・」
俺「申し訳ありません。機械が古くなってしまって・・・」
適当に受け答えしながら、不具合をチェックするフリをする。
実際のところ、設備が古くなっているというのは嘘ではない。