三葉の3人がどうなったのか?
全ての答えを得た後、僕は解放された。
小神警備の車で途中まで乗せられた。
本当には断りたかったが、無理やり車に乗せられた。
僕の家のすぐ近くの公園で降ろされる
「白石くん。君が鉄心坊ちゃんを真人間にしてくれたことは恩義を感じている。
だから、警察にはいかないでくれ。
我々は、少なくとも私は君を[排除]したくない。」
そういわれたが僕はショックすぎてろくにこの時のことは覚えてない。
ふらふらとおぼつかない足取りで家に戻った。
「ただいま・・・」
父さんの靴はあるが返事がない。
「父さん・・・・?」
「うわっ、ぁあああああああああ」
リビングでは父さんが首をつっていた。
ここからしばらく僕の記憶ははっきりしない。
親戚の人たちに助けられて、なんとか父さんの葬儀を終えた。
落ち着いたのは3年生になってからだ。
この期間、三葉の3人のことは頭から消えていた。
落ち着いたころ、僕は先生に呼び出された。
「白石は進路はどうする・・?その、親御さんのことがいろいろ大変だったからな」
「進学の予定でしたが申し訳ありません。就職に切り替えます。今からでも間に合うでしょうか?」
「そ、そうか、しかし、成績が少し落ちたとは言えもったいないな。」
「そうですね。でも、家庭の事情ですから。」
「そうか、君は真面目だからな。学校でも出来る限りのことはするよ。」
「では、地元ではなく、東京での就職をお願いしたいです。」
「なんだ、地元じゃないのか?」
「ええ、親類が近くにいるので」
「難しいが、何とかしてみるよ」
マンションのローンは父さんの保険金で完済しているので、お金がないわけではなかったが、僕は忌まわしい記憶しかないこの町から早く離れたかった。
父さんが死んで、転勤族だったため親戚との付き合いもあまりしてこなかったこともあり、頼れる人たちもほとんどいない。
呑気に学生をする気分ではなかった。
そうして僕は学校から東京に就職のあっせんを受けた。
僕の通っている高校が進学校出会ったこともあって、就職する生徒はあまりいなかったが、東京にある大企業の子会社で高卒としては異例の待遇ということだった。
僕は三年生の1月を待たずに東京に引っ越すことになった。
卒業証書は後で送ってくれるらしい。
裏では小神家がいろいろと手をまわしていたようだが、もう僕にとってはどうでもよかった。
果たして、父さんが死んだことに小神家がかかわっているのか?
僕にはわからなかった。
しかし、それもすらもうどうでもよかった。
この煩わしい街から一刻も早く出ていけるならそれでいい。
そして、この町を離れる当日
「じゃあな、兄弟」
「見送りに来てくれてありがとう。岡君」
「9月の英雄の見送りがたった一人とはな。中学の時のクラスメイトにも声をかけたんだが・・・」
「いいよ、僕が小神家ともめたのは周知の事実だし、こんなものだろう。」
「また会えるよな?兄弟」
「どうかな?戻ってくることがあったら連絡するよ。さよなら、岡君。」
そして、東京行きのローカル線が出発する。
数時間かけて東京に到着した。
夜半といっても良い時間だったが、まだ雑踏には人がそれなりにいた。
「寒いと思ったら雪か・・・」
街の明かりに照らされた鈍色の空からは雪が降ってきていた。
僕は寒さに思わず肩をすくめて雑踏の中に踏み出していった。
人生に勝ち負けなんてない。ただ現実が続いていくだけだ。
僕はあの街の呪いを振り払うようにそう小さな声で独り言ちた
エピローグ
岡視点
俺は[9月の英雄]を見送った。
その足で小神家の屋敷に向かう。
小神家当主の爺さんの部屋に通された。
「で、どうだった。」
俺は土下座しながら報告する
「見送りは俺一人でした。戻ってくるかどうかはわからないと言っていましたが、たぶんもう戻ってこないでしょう」
「そうか、ご苦労。金はいつもの口座に振り込んでおく。下がってよい」
そうして俺は退出する。
屋敷の廊下で小神鉄心に遭遇する。
嫌な奴に遭ったな・・・・。
「よう、大親友の見送りはどうだった?岡。」
「特に問題はありませんでしたよ。坊ちゃん」
「まさか白石も自分の情報を流していたのが大親友のお前だったとは思わないだろうな。」
「勘弁してください。坊ちゃん。」
「いや、悪かったな。特に意味はない。忘れてくれ。」
この人も白石と会ってから変わったな。
以前なら、ちょっとでも気に入らないことを言う奴はブン殴っていただろう。
そう、小神鉄心は9月の英雄事件があってからつきものが落ちたように真面目になった。
そして、何の後ろ盾もない白石より、小神家の御曹司である鉄心の歓心を買おうという奴があっという間に増えて行った。
これだけであればこんなことにはならなかったかもしれない。
しかし、白石と三葉の君は無視するには目立ちすぎた。
三葉の君だけなら女だけだからまだ許されたかもしれない。
昭和どころか明治以前の価値観のまま時間が止まったような一族だからな。
小神家は白石の求心力を恐れ、いろいろと嗅ぎまわっていた白石を徹底的に潰すことを決定した。
その人となりを知る奴は白石がそんな奴じゃないと分かっていたが、叩けば埃がkg単位で出てくる小神家はそうは思わなかった。
小神家は誠実さで多くの人を動かし、巨大なうねりを作った白石の求心力を何より恐れていた。
もちろんそれを承知で白石の情報を流していたのはこの俺だ。
鉄心や明男に反感を抱いていた奴は鉄心が真面目になったことによってみんな小神家の側についた。
俺も鉄心に反感を持っていたが、鞍替えした口だ。
(確かに坊ちゃんの皮肉通り、勝ち馬に乗ろうとするこの町の住民の卑しさが小神家の繁栄を許しているのかもな。)
その筆頭が俺なら、笑えないな・・・。
屋敷を歩いていると三葉の君の葵が部屋の前で小神家の男にセクハラされていた。
確か、本家当主の弟だったはずだ。
真昼間っからよくやる。
葵は部屋の前でもう半裸にされていた。
俺に気が付くと、葵を部屋に押し込めた。
そして、押し込められた部屋から葵の嬌声がうっすらと聞こえてきた。
いい女は権力や金で縛り付けてモノにする。
年を取ってきたら風俗店送りだ
目立つ男は排除する。
俺らモブに回ってくるのは無残に食い散らかされた後の残飯か、最初からパッとしない華(女)だけだ。
儲け話もおいしいところはすべて小神家が独占している。
何も知らないやつが入っていこうとすれば白石のように潰される。
この町にはどこにも救いはないが、自分が無事ならいい。
俺は正義の味方でもヒーローでもない。
普通のモブでいい。
俺は改めてこの町の歯車に徹することを決めた。
無数の俺のような卑しい人間が小神家の権力を強くしていく。
そして、明日も明後日も、一か月後も半年後も、何年、何十年先もずっとずっとこの町の支配の構造は続いていく。
大勢の弱者を食い物にして。
三葉の君へ ~転校先で出会った三人の美少女~(了)
三葉の君へ ~転校先で出会った三人の美少女~(後編) 本記事














