三葉の君へ ~転校先で出会った三人の美少女~(前編) 本記事
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中学生編
僕の一家は父親の転勤であちこちを転々としていた。
僕は学校に馴染めず、母もノイローゼになり、離婚した。
母は僕を引き取らなかった。
中学2年の春僕はとある歴史のある町に父と一緒に移住することになった。
父は離婚を機会に転勤を断り、出世コースから外れた。
父の処遇は今から考えると制裁人事だったんだろう。
とても難しい土地柄で、そこに転勤させられた本社の社員は高い確率で辞めてしまうという曰くつきの支社だった。
当時の僕はそんなこと知る由もなく、「もう転校しなくて済む」という話に少し希望を見出したところだった。
もう転勤はないというこの町で僕ら一家はマンションを買った。
父は仕事で先乗りして、引っ越しが終わったら僕は後から一人で電車で引っ越し先に向かうことになった。
こういうのも今までは普通だった。
そこに初めて降り立ったとき、どんよりと曇っており、鈍色の空を見ながら、神様を少し恨んだりもした。
これからせっかく良いことがありそうなのに、こんな天気はないだろう・・・。
僕は今まで父の転勤を理由に、部活も入ってなかった。
今度こそ何かやってみよう、僕はそう思った。
初登校の日、僕はまず職員室に行ってから先生と一緒に教室に向かった。
先生が教室に入ると僕だけ引き戸の外に待機させられる。
「今日は転校生を紹介する。」
教室がざわざわとざわめくのが扉越しにも分かった。
「よし、白石、入ってこい」
そして、僕は教室にはいる。
教室中の視線が一気に僕に集まって僕は緊張した。
教壇の先生の横に立つ。
「白石健介です。よろしくお願いします。」
転校生ならだれもが通る自己紹介を済ませた。
ざわざわと教室がざわめく。
今度こそ腰を落ち着けて頑張れる。
僕はこの時そう思った。
放課後
先生はホームルールが終わる時に一人の女子生徒に僕に学校の案内を頼んだ。
「夏芽君、君、生徒会役員だったよね?白石君を案内してもらえないか?」
「わかりました。白石君。わからないことがあったら何でも聞いてね」
夏芽さんはなかなかかわいい女の子だった。
勝気そうな顔で胸もそこそこある。
僕は夏芽さんに校内を案内されながら、雑談をする。
「はい、ここが最後よ。体育館ね。まだ部活が始まるには時間があるのであまり人がいないけど、そのうち人がいっぱいになるわ。」
「白石君は何か部活やってたの?」
「いや、父さんの都合で転勤が多くて、今まで腰を落ち着けて何かをやる機会がなかったんだ。」
「そう、大変だったね。」
「何か今から始めても問題ない部活があればいいんだけど」
「入るのはできると思うけど、スポーツは小さいときからみんなやってる人が多いから、今から始めるのは厳しいかなあ。もう人間関係が出来上がっているし。」
「そうか、そうだよね。父さんはもう転勤しなくていいからここで何か始めたかったんだけど。」
「そう、じゃあさ、生徒会に入らない?」
「生徒会?」
「私ね、生徒会の役員なんだ。大変だけど、やりがいはあるわよ?」
「生徒会かあ・・・思ってもみなかったな。ちょっと考えさせてもらえるかな?あ、校内の案内、ありがとう。」
そう言って夏芽さんとはそこで別れた。
いろいろと考えた挙句、僕は結局生徒会に入ることにした。
理由は、やはり今から部活というのは厳しいだろうと思ったからだ。
僕は夏芽さんに生徒会に入ることを伝えると、その日の放課後、生徒会室に連れて行ってくれた。
生徒会室には2人の女の子がいた。
望月さんと合わせると3人だ。
「こんにちは、白石君。私は会長の菜月よ。菜月葵。よろしくね。」
菜月と名乗った女の子はスラリとした体つきをしており、胸が大きい。
僕はその大きな胸に釘付けになった。
そして、驚くほど整った顔立ちだった。アイドルでもここまでの美少女はそうはいないだろう。
夏芽さんから突っ込まれる。
「ちょっとー、どこ見てるの?」
「あ、ご、ゴメン。」
「こんにちは、私は会計の植草こころです。」
[こころ]と名乗った女の子はツインテールが似合うちょっと幼い感じの子だった。
胸はかなり小さいが顔はかわいい。
「そして、私が副会長の夏芽優月よ。よろしくね。」
「あと二人いるんだけど、今日は来てないからおいおい紹介するわ」
この日は簡単な荷物を運びを手伝ってそのまま帰った。
3人は他に用事があるようだった。
優月視点
転校生は早々に帰した。
「どう?あいつ?」
「分からないわ。でも真面目で誠実そう」
「小神家のひも付きでない男子って貴重だからね。転校生だから万が一にも小神家と関係してるってことはないはずよ。」
小神家はこの町に昔からある名家で、もとは大名家だった。明治維新や近代化、第二次大戦の荒波をうまく乗り切って一大勢力を築いている。
この町で何かをするならまず小神家に話を通さない限り何もできない。基本そういう話は通らないし、おいしいところはすべて小神家が持って行ってしまう。
そう、私たちの代の生徒会は同世代に小神家が在籍しているにも関わらず、女子である私たちが生徒会役員になり、小神家の関係者から大なり小なりのいやがらせを受けてきた。
特に、露骨なのが男子生徒を生徒会にスカウトしようとすると小神家の子分が脅しをかけることだ。
ほんのわずかの脅しでもみんな逃げて行った。
この生徒会には男手が足りてなかったのだ。
私たちのボディガードとしてはちょっと小柄で貧相で背が小さいけど・・・
王子様というより弟って感じだけど、この際贅沢は言ってられない。
「そうね。しばらく様子を見ましょう。」
「[こころ]はどう?」
「私は別に・・・・。でも真面目でいい人そうだね」
「そうねぇ。いい人と言えばいい人なんだろうけど、そういう男って頼りにならないのよねぇ。」
後日私はこの評価がまったく違っていたことを思い知らされるのだが、この時は私たちは白石君はあまりあてにならないけど、とりあえずキープした貴重な男手程度の認識だった。
白石視点
この日から僕は生徒会の一員として、忙しい日々を送ることになった。
学校の成績は良いほうだった。
転校によって勉強の進度はまちまちだったのでかなり早めに予習をしている癖がついていたからだ。
頻繁な転校で部活はできなかったので、せめて勉強だけは・・・と思い頑張て来た悲しい副産物だった。
しかし、先生からは勉強の成績が良く、生徒会にも入ったので信頼できる生徒として一定の信用を得た。
ある日、クラスメイトの一人から話しかけられる。
僕は怪訝な顔で聞き返す
「よう、転校生」
「君は?」
「ああ、俺は 岡 和文 よろしくな」
「岡君。よろしくね」
「お前、生徒会に入ったの?」
「せっかく誘われたからね。」
「おお、三葉の君のお眼鏡にかなったのは凄いな」
「三葉の君?」
「三葉の君ってのは葉月葵、夏芽夕月、植草こころの3人のことだよ。」
「へーえ、なんでそんな大層なあだ名がついてるの?」
「3人とも美人でかわいくて、運動も勉強もできるからだ。そして、名前や苗字に植物に由来する漢字が入ってるから
誰が言うともなく呼ばれるようになったんだよ。」
「確かにそうだね。面白いなあ。」
「はは、お前もそのうちあの3人の凄さがわかるさ。」
昼休み時間、僕が岡君と廊下を歩いていると、
「おい、端っこによれ。小神だ。」
僕は廊下の端によると髪を金色に染めてオールバックにした時代錯誤のものすごいヤンキーが通り過ぎて行った。
「す、凄い人だね。」
「ああ、この辺一帯の地主で実業家のボンボン、小神鉄心だ。ヤンキーであちこち問題を起こしてるんだけど、親が金持ちで権力者だから全てもみ消しちまう。
お前が転校してくる前、正義感の強い新任の先生が小神をしつこく注意したんだが、闇討ちされちまった。金属の棒で滅多打ち。警察も適当に捜査して犯人不明のまま終わりだ。
後ろの二人は小神警備の社員の息子、将来の幹部候補ってところだな。
鉄心の懐刀で格闘技もやってる。こいつらが滅法強いからお前も気をつけろよ。
荒事になったら絶対に敵わないぞ。」
「あ、あとあいつにも注意な」
目くばせをすると、メガネをかけた小太りの生徒が歩いているのが見えた。
「あいつは小柴だ。小柴明男。女子の下着を盗む変態といわれているが、いつも証拠不十分でお咎めなしになっている。
あいつも小神家の一族の関係者で小神に次ぐ上位に位置するらしい。」
「この辺一帯は小神家が取り仕切っている。小神家が白といえば黒いものも白になる。
俺ら一般人が絶対にかかわってはいけない人種だ。お前も注意しろよ。」
「はは、僕はかかわることはないよ。どうってことない人間だし。」
「そうだったとしても注意しろよ。小神家はものすごい優等生とあいつらみたいなどうしようもないヤンキーや不審者と両極端に分かれる。当たり外れが激しくて、俺らは外れの世代だ。」
そういう岡君の顔は苦り切っていた。
よほど、手ひどい被害に遭ってきたんだろうな・・・注意しないと。
岡君は人当たりが良く、学校では事情通として通っているようだった。
僕はとりあえず岡君と友達になった。
もっとも彼には友達がたくさんいるようだったが・・・・。
小神かあ・・・そういえば父さんもここは地元の有力者が取り仕切ってるから難しい土地だと言ってたなあ。
僕はその時そんな風に考えていた。
この時はこれで終わったが、小柴明男に関してはこんなことがあった。
ある日、生徒会室に行く途中でこころちゃんに会った。
こころちゃんは青い顔をしている。
「どうしたの?」
こころちゃんは目配せをすると小柴明男がこちらを見ている。
僕をものすごい目で睨んでいた。
「ずっと後をつけてくるの。私怖くて。白石君。生徒会室に行くなら一緒にいこう?」
「分かった」
僕は小柴からこころちゃんを隠すように盾になる。
小柴の目つきが一層厳しくなったが。
ずっと後をついてくるので小柴明男に僕は話しかけてみることにした。
ここまでしつこいのは常軌を逸している。
さすがに何らかの注意や警告をすべきだと思った。
「僕は生徒会庶務の白石慎吾と言います。僕らに何か用かな?」
少し離れた場所にいるこころちゃんが心配そうにこちらを見ている。
「お、おまえNTR男だな?。僕とこころちゃんの仲は引き裂けないぞ。」
NT・・・なんだって?
「あの、何のことなんだろう。僕は生徒会室に行く途中なんだけど。」
「ち、調子に乗りやがって、覚えてろよ白石、俺はお前の名前を覚えたぞ。」
そう言って小柴明男は立ち去った。
見事に会話が成立しない。
「こころちゃんはあの男と知り合いなの?」
「全然、話したこともないよ。」
「そうなの?何か知ってる風だったけど・・・」
「私ね、体操服とか制服とかもう3回も盗まれてるんだ。それでああやって時々付きまとわれると怖くて。」
「わかった。僕は夏芽さんと同じクラスだから、何かあったら僕のクラスにおいでよ。大したことはできないかもしれないけど、一緒にいることくらいはできるよ。」
「ありがとう白石君」
「どうってことないよ。また何かあったら言ってよ」
「ふふ、頼りにしてるわ。」
そうして僕らは二人で生徒会室に向かった。
岡君が言ってたとおり、僕は次の月期末テストで三葉の君の3人の成績がすさまじいことを実感した。
けど、僕も意地を見せて、彼女らに次ぐ4位だった。
テストの結果発表の後、HRで先生から褒められた。
「白石君。君、凄いね。菜月君、夏芽君、植草君について4位だぞ。」
クラスから「おおー」という声が上がる。
僕は少し照れ臭くなって
「たまたまです。転校前の進度が早かったからですよ。」
「そうか、今後も頑張るように。」
パチパチパチ
クラスから拍手が沸き起こる。
それからしばらく経った、ある時、、少し遅れて生徒会室に行くと3人はすでにきているようだった。
ドアの外で話し声が聞こえたので耳を澄ますと・・・。
「えーっ。こころちゃん、あいつのどこがいいの?」
「・・・・やさしくて頼りになるところ。」
こころちゃんがかなり照れながら話していた。
「でもあいつ、葵のおっぱいが好きだよね。あいつは明らかに私たちに釣り合ってないと思うけどなあ」
「ちょっと優月ちゃん?」
「ごめんごめん、でも葵のおっぱいは凄い武器だと思うよ。どんな男でもイチコロじゃん。」
夏芽さんの辛辣な言葉が胸に突き刺さる。
釣り合ってなくて悪かったな。
僕はわざとらしくドアをノックした。
コンコン
「ヤバッ」
夏芽さんの慌てる声が聞こえた。
僕は何食わぬ顔で生徒会室に入る。
「こんにちは、少し遅れました、すみません。」
夏芽さんはしばらく僕の様子をうかがっていたがばれてないと踏んだのか普通に話しかけてきた。
何もなかったように振舞う。
僕はこの日常を大切にしようと思った。
そうして夏休みが終わると、学際の時期がやってきた。
生徒会も学際の仕切りで忙しく飛び回ってきた。
学際を前日に控えた日・・・
一人の生徒が血相を変えて飛び込んできた。
「大変です会長、小神君が・・・」
「落ち着いて、何があったの?」
どうも、この生徒によると小神君が仲間を二人連れてバイクに乗って学校の正門に現れたらしい。
そして、学際の飾りつけなどを破壊しているらしい
手が空いていた僕だけですぐに現場に向かった。
そこには小神君と体格の大きい二人の手下が金属バットを手にもって暴れていた。
二人の手下は小神警備という警備会社の社員の息子らしい。
小神警備は小神家が持っている荒事専門の会社で表向きは警備会社を装っているがその実はヤクザと変わらない札付きの集団だった。
僕はパッとしない自分が生徒会役員に勧誘された理由にこの時始めて気が付いた。
きっと弱くても大して役に立たなくても小神家に対抗するための手札が欲しかったんだろう。
僕は特別じゃない。
そう気が付いたとき、僕は恐怖で頭がおかしくなりそうになった。
これからたった一人で小神鉄心と手下の筋骨隆々の二人と対峙するのだ。
「あの・・・」
「ああ、なんだテメェは」
金髪のヤンキー、小神鉄心が僕に凄む。
手には金属バットを持っている。
どこの昭和から来たんだコイツ。
「僕は生徒会庶務の白石です。すみませんが、今すぐバイクをどけて学校の敷地から出て行ってくれませんか?」
「はあ、テメェ俺に命令しようってのか?」
「命令ではありません。あくまでもお願いです。」
「ハッ嫌だね。ほら、どーする生徒会。」
「お願いします。出て行ってください。」
僕は必死に頭を下げた。
